鶏肉の生食用ガイドラインの難しさについて

厚生労働省がついに生食用の鶏についてガイドラインを出すとのこと。

news.web.nhk

 

事の発端はおそらくこれである。
最近のグルメ系インフルエンサーはとにかくバズれば良いという感じで、鶏も牛も結構生の写真をジャンジャカ上げていて「えっ?牛肉も鶏も生食解禁されてるの?」と勘違いしてしまいそうで、これもそんな投稿の一つ。
これが結構炎上していて、その後にどこかのお医者さんが鳥刺しを擁護して、で、まあ色んな人がいろんな文脈で自分の主張をし始めてて、今に至るという感じだ。


個人的に鳥刺しに出会う前に宮崎で食べたレアの鶏のご手焼きが衝撃的に美味かったので、レアの鶏肉が旨いのはよく分かる。
しかし、鹿児島宮崎以外での鶏の生食はリスクが高い。
そしてちょっと前にも書いたのだが鹿児島宮崎でももちろんリスクはあるのだ。

 

で、この流れを受けて厚生労働省がガイドラインを出すということなのだが、個人的には賛成であるが、鹿児島宮崎以外では鶏刺し用の鶏肉を調理するのは結構難しそうというのが個人的な感想である。

 

新鮮=当たらないではない

いろいろな人が言っているのだけれど、鶏刺しに関して新鮮だから当たらないというのは間違いである。
鹿児島の鶏刺し、消費期限を見ると以外に長かったりする。※もちろん事前の衛生管理がしっかりしているというのが前提であるが
また新鮮であれば美味しいというものでもない。

以前上荒磯鶏肉店で捌いてから2時間位の鶏肉を食べたのだけど、旨味がまだ無く水っぽい感じがあった。
お店によっては衛生管理のもと肉を寝かせているところもある。
なので一部のお店が鶏刺しについて「新鮮なので安心…新鮮なので旨い!」みたいな表現をしているとちょっとソワソワしてしまう。

ガイドラインの作成にあたり、この認識が改められてくれるのであれば歓迎である。

ガイドラインについて

厚生労働省が衛生基準のガイドラインを出す事になれば、実績のある鹿児島のガイドラインを参考にして作成が進むのでは、というのが個人的な予想である。
このガイドライン、どういうものかざっくり言うと「菌がつかないように気をつけて調理をしてね」という物である。
具体的な手法などは事業者が工夫をしなくてはいけない。


「えっ?」と思った人もいるかも知れない。
僕も実際ガイドラインを読む前は、鶏肉はこういう器具をつかって捌いてこういう殺菌処理をしてその後菌がいるかどうかをチェックして云々…みたいなもう少し事細かに記載してるのかと思ったが、内容は結構あっさりしているのだ。
確かにあまり厳しくしすぎると、クリアできない既存の精肉店などが出てくるので(実際生食用として販売できていないお店もある)各企業の実情に合わせて気をつけろよ、くらいにしか言えないのかもしれない。

だが、鹿児島の精肉に携わる企業は「食中毒出さないように頑張ってね!」というややふわっとしたガイドラインを「鶏刺し県の看板を守る」というプライドで必死で守っているわけである。
フグ屋に入って中毒を心配する客に、店主が「大丈夫だよ、お前さんの命より店の看板の方が重たいんだから」という笑い話があるが、おそらくそんな感じなのではないだろうか。
自分のところの鶏肉で食中毒が出たら会社どころか県の威信に関わるとかよっぽどである。

鹿児島の生食用鶏を買おう

鹿児島で流通している生食用の鶏肉は大きく分けて2つ。
養鶏場から工場へ送られてそこで処理された鶏肉と、養鶏場が自社で処理をして販売しているもの。
街の精肉店は工場あるいは契約した養鶏場から処理された鶏肉を卸して捌いて販売を行っている。
生食用の丸鶏はふつうの丸鶏とは処理が違う。
このため大規模な食鳥工場では独自のラインとノウハウが必要になってくる。
南九州では需要があるため、加熱用の鶏肉とは別に生食用の工場が成り立つのだけれど、鶏刺し圏外では需要が未知数のため工場を新設というのはちょっと考えにくい。

もちろん工場以外行われている外剥ぎ式の処理で鶏刺しを制作する精肉店も可能ではあるが、こちらも需要がどれくらいあるのか分からないので現実的ではなさそうだ。

もっとも、南九州以外の養鶏場で自社ブランドの鶏を鶏刺し用の鶏として販売していく事ができる様になったのは面白いのかもしれない。
鹿児島で良く名前が出ている鶏は、大摩桜、黒さつま鶏、赤鶏、日向鶏、飛来幸鶏(名古屋コーチン)、くらいかな?
圏外の鶏で鶏刺しにしたら美味しいブランド鶏ももちろんあると思うので、ガイドラインが整ったら全国の美味しい鶏刺しが食べてみたい。

 

そんなわけで楽観的に考えたら厚生労働省がガイドラインを出した後は、鹿児島宮崎で処理された生食用鶏を使ってください、ということになると思う。
もちろん今でも、首都圏で本当に鶏刺しが好きな人は鹿児島から取り寄せて食べている。
企業によって鶏の種類(ブランド鶏はもちろん、親鳥・若鶏なども違う)も切り方も違うので自分が好きな鶏刺しを探すのも楽しい。
この機会に鹿児島の鶏刺しを取り寄せてみてはどうだろうか。

 

torisashilove.com

写真は最近食べたけど記事を書くのを忘れていた丸山地鶏店の鶏刺し。

丸山地鶏店