鹿児島に来たら精肉店の鳥刺しを食べてみよう

鹿児島といえば鶏肉を刺し身で食べる鶏刺し文化である。
一般的に生で鶏肉を食べるのはハイリスクであるが、昔からの食文化を守るため、鹿児島県は生食リスクを下げるための独自の衛生基準を掲げ、鶏刺しを扱う業者に遵守させている。※もちろんリスクはゼロでは有りません。
このため飲み屋では普通に鶏刺しが並んでいるし、最近ではスーパーで鶏刺しが大量に並んでいる姿がSNSでアップされて驚いている県外人も多いと思う。

だがスーパーや飲食店で並ぶ鶏刺しは、鹿児島の鶏刺し文化の一端に過ぎない。
鹿児島には100を超える鶏刺しを扱う鶏刺し専門店の精肉店があり、お店によって多種多様な鶏刺しが販売されている。
多種多様と言っても、ゴマダレ鶏刺しやピリ辛鶏刺しのようなアレンジの効いた鶏刺しを売っているというわけではない。(いやそれも美味しそうだけれど)
鶏の品種もブランド鶏として表に出ているのは5~6種類くらいで、それらも販売時は普通に鶏刺しという名前で販売されている。
では一体何が違うのか?下のグラフを見てほしい。

こちらのグラフは僕が訪問した鶏刺し専門店で印象深かったお店の鶏刺しをマッピングしたものである。※圧倒的個人的主観
縦軸が肉の柔らかさ、横軸が鶏刺しの厚さ、そして円の大きさが香ばしさである。
一言で鶏刺しと言っても、食感や香りに大きな違いがあることがご想像できると思う。
いやいや、切り方や歯ごたえでそんなに違うの…?と思われる方もいるかも知れない。
実際僕も鶏刺しを食べ始めた頃は、鶏刺しは甘い醤油にしょうがやにんにくを溶かし生の玉ねぎを一緒に食べるので「これ薬味と醤油だけで旨いんじゃね?(実際旨い)」と思っていたのだが、様々なお店を食べ比べてみると食感や香りの違いで全然違う食体験となることがわかった。
今回は特に特色の強い店舗を紹介し、鹿児島の鶏刺し文化の幅広さを感じてもらえたらと思う。

口の中でとろりと溶ける冷凍薄切り鶏刺し/マーちゃん鶏刺し

まーちゃんの鶏刺し
まーちゃんの鶏刺し

いきなりスーパーの鶏刺しを紹介することを許してほしい。
この鶏刺しは鹿児島県薩摩半島の日本海寄り、さつま市加世田という町にある、地元のスーパー万世ストアで販売されている鶏刺しである。
地方のスーパーの精肉コーナーなのでギリギリ精肉店と思っていただきたい。
さて、ここの鶏刺しの特徴的なところは、冷凍の鶏肉を非常に薄くスライスし、冷凍のまま販売しているというところ。
これを半解凍で玉ねぎと一緒に口に運ぶ。
いわゆる鮭のルイベのような感じで口の中でとろりととろける食感が美味は他になくとても美味だ。
生肉を噛む食感が少ないため、鶏刺しビギナーにもおすすめの鶏刺しなのだ。
薄くカットしているため、新玉ねぎとあえてドレッシングで食べたりとアレンジも幅広い。

まーちゃんの鶏刺し売り場

万世ストアの外観や内装は、いわゆる地方のスーパーといった感じの風格のある佇まいなのだけれども、こちらの鶏刺しは全国にファンのいるヒット商品。店内には持ち帰り用の保冷箱なども常備されている。
楽天などで「アイスバード」という名前で販売されている。

ブリッとモチっとした歯ごたえの厚切り鶏刺し/有水食鳥

有水食鳥の鶏刺し
有水食鳥の鶏刺し

一番薄い鶏刺しの次は分厚い鶏刺しの紹介である。
実はこちら、僕が20年前に始めて食べた専門店の鶏刺し。
お店は霧島のちょっと下あたりの蒲生というところにある。
確か呑兵衛の先輩だったかが「蒲生に美味しい鶏刺しが有るんだ」と買ってきたのをもらったと思うが、飲食店やスーパーの薄切り鳥刺しに慣れていた僕は、このぶつ切りのテクスチャにビビってしまった。
こちらの鶏刺しはとても柔らかいのだが、繊維のブリっとした歯ごたえが楽しめ「お肉食べています!」という感じの食感。
生肉食べている感がすごいので上級者向けと言える。

有水食鳥でもう一つ特徴的なのがこちらの駐車場。
購入したら前から順に出ていくので合理的…なのかな?
一見ドライブスルーのように見えるが降りて購入しないといけない(昔はドライブスルーでも行けたのか?)。

精肉店系の鶏刺しやさんはこんな感じで肉がゴンゴン!って置いてあるところが多い。
中では無愛想な(これも鶏刺し専門店では多い)おじさんが肉を切っており、注文通りに肉を切ってくれる。
僕は普通に鶏刺しを頼んだのだけれども、好きな人はもっと厚切りで買っていくのかもしれない。

有水食鳥の鶏刺し

焼き立てホカホカ鳥さしみとは!?/佐藤精肉店

佐藤精肉店の鶏刺し
佐藤精肉店の鶏刺し

鹿児島の鶏刺しの要素の一つに「香ばしさ」がある。
鶏肉の処理の中で産毛の除去や表面の消毒のためため皮目を焼く工程が有り、鹿児島の鶏刺しには焦げ目がついているものが多い。
しかし香ばしさをつけるためにわざわざ鶏を切る前に炙ったり焼いたりという工程を行うお店がいくつもある。

鹿児島市内にある佐藤精肉店もその香ばしい鶏刺しを販売しているお店の一つで、お店のフライヤーで自ら「焼き立て鳥刺し身」と謳うほど。
注文してから焼き上げる焼き立ての鶏刺しを手に取るとほんのりと暖かく、包み紙を開くとフワッと香ばしい香りが立ち上る。
いわゆるたたきに近い。
通常鶏刺しは甘い醤油で食べるが、こちらの鶏刺しのおすすめはごま油と塩。
鶏の香ばしさとごま油の香ばしさがダブルで鼻に突き抜けとても美味しい。

鹿児島の鶏刺し店あるある、年末年始は地元の鶏刺しで一杯勢が多い。
佐藤精肉店は人気店なので年末年始は予約必須。
普段は2人位で回している小さな店舗なのだが、盆正月は4人くらいがひしめき合っている。

切り方一つでここまで違うと感動!/薩摩大摩桜

大摩桜の鶏刺し
大摩桜の鶏刺し

こちらは特攻基地で有名な知覧にある大摩桜(だいまおう)という最近できたお店。
変わった名前だが、実は大摩桜というのは鶏のブランド。
鹿児島県内にはこういった生産直売の鶏刺しやさんがいくつかある。
さすがに自分のところの鶏の魅力を知り尽くしているということで、鶏の身を非常に細かく部位分けし販売している。
他店ではぶつ切りで全部ごちゃまぜになって販売されている部位も、別々の部位として食べ比べてみると食感や味わいの違いに驚くばかりだ。
切り方にもその部位にあった切り方をしているようで、胸肉などはスタンダードな厚さと厚切りと揃えているのがニクイ。
鹿児島でも皮は焼き切って身と一緒に切ったり、茹でて他の商品になったりすることが多いのだが、こちらのように純粋に皮の刺し身として販売しているのは珍しい。

出来た当初から「鶏刺しのすごい店が出来たらしいぞ」と鶏刺し界隈では話題だった大摩桜。
郊外の広い土地に素敵なビジュアルで鶏刺しの聖地感がある。

薄くてとにかくデカい鳥刺し/松木精肉店

大きい鶏刺し
大きい鶏刺し

最後に紹介したいのがこちらのとにかくデカイビジュアルの鶏刺しである。
こちらは鹿児島の北端長島に渡る橋のちょい手前にある松木精肉店の鳥刺し。
マーちゃんの鶏刺しと同じで冷凍薄切りなのだが、とにかく横幅がデカい。
上にある他店の写真を見てもらえばわかるのだが、大体鹿児島の鶏刺しは肉屋の紙に2列、もしくは3列で並んでくるのだけれども、こちらはベローンと大きいのが一枚横たわっている。
薄切りだけれどもここまで薄いと肉を食べてる感が強いので満足感は高い。
また、溶け切ってもシッカリと形を保持できる厚さがあるので、薄切り特有のトロトロ感がかなり強い。
同じ薄切りでもマーちゃん鶏刺しとは全く別の味わいになるのが面白い。

顔の大きさと比べても大きい鶏刺し

顔の大きさと比較してみたが、顔が小さくないのでとても分かりにくかった。
こんなことをしてみたくなるくらいの大きさだったということはわかって欲しい。

他にもまだまだある鹿児島の鳥刺し

鹿児島の鶏刺しの奥深さ、ちょっぴり感じていただけただろうか。
ぜひ鹿児島を訪れた際は飲食店で以外の鶏刺しにも箸を伸ばしてみて欲しい。
多くの鶏刺し専門店は地域に密着した精肉店が多いため、日曜定休日だったり、旅行では行きにくい場所だったりと、訪問しにくい所も多い。
そもそも旅行で持ち帰り鶏刺しをどうやって食べるの?という疑問もわかる。
しかし鹿児島県内のあちこちに、その地域に愛される個性豊かな鶏刺しが有るのを無視しても良いのでしょうか?
鶏刺し専門店では醤油や薬味も合わせて販売している店も多いので、旅先で鶏刺し専門店を見つけた時は迷わず購入し、公演のベンチや芝生の上で鶏刺しを楽しんで欲しい。

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