上荒磯地どり鶏肉店/鹿児島市

これぞ鶏刺し文化。鹿児島の文化遺産に登録すべき銘店。

吉田インターのすぐ近くのジャニス洋菓子店(ここのお菓子はどれも最高、メレンゲ菓子はお酒に合うのでおすすめです)からの帰りに「そういえばこのあたりにまだ行ったことがない鶏刺しやさんがあったな」と思い出したのが上荒磯地どり鶏肉店。
Googleマップでマッピングしたときに、なんか山の中に可愛い看板があるお店だなーと思って気になっていたのである。
せっかくここまで来たのでちょっと行ってみることに。

農業センターの道の至る所にこんな手作り感のあるかわいい看板が立ててある。
お陰で辺鄙な場所にあるのだけれど迷うこと無く到着した。

細い道からさらに細い筋に入り上の方に登っていくと、突然このような気合の入った店舗が。
お店には営業中と書いてあるが、人の気配は全く無い。
「大丈夫か…?」というのが第一印象である。
奥の方から煙が上がっているので、そちらの方へ行ってみると、果たして小屋の中に老夫婦がいらっしゃった。

なにせこんな感じの店舗なので、ひょっとすると予約オンリーかもしれない。
恐る恐る「鶏刺しありますか…?」と聞くと、おばあさまがとても柔らかい口調で「あら、うちは一羽丸ごとなんだけど、それで良ければ…」

だった!言われて思い出したのだが、昔鶏刺しブログで一羽まるまる販売の鶏刺しやさんがあるという話をうっすら覚えていたけれど、ここだったのか!!
流石に鳥をまるまる一羽買い取るというのは非現実的だと思いターゲットから除外していたのだけれど、まさか飛び込んだ店がその店だったとは…。
とりあえず価格を聞いてみると1羽4000円くらいだろうとのこと。
べらぼうに高いわけでは無いし、飛び込んだのもなにかの縁ということでお願いすることに。

「じゃあ今から絞めますので」
とおばあさまがスタスタと鳥小屋のようなところへと向かう。
えぇ?今から〆るの!?締めたての鶏刺し!?予想外の展開にテンションバク上がりである。
慌てて鳥小屋の方へついていこうとすると「あぁ~すみません此処から先は入れないです!」と。
ああ、確かに鶏舎は感染防止が厳しいんだった。

すぐにおばあさまはまるまると太った鳥を担いで帰ってきて、店の奥で絞め始めた。
なかに入ることが出来ず、遠巻きに見ることしか出来なかったのだが、噂には聞いていたがなかなかに興味深い作業だった。

まず、生きた鳥の足を天井からおりているワイヤーにくくりつける。
そして鳥の首のあたりの血管を切ると、すぐに漏斗のような金属の筒の中に鶏の頭を突っ込み、上から水をじゃあじゃあとかけ血を抜く。
その後、鳥は部屋の奥にいるおじいさんへ引き継がれ、おそらく羽を焼き、水で冷やすみたいな作業をされ、やがてお店の正面の調理場へ丸鶏の状態となりやってきた。
奥でおじいさんがもも肉、胸肉、と解体を始め、大まかに分けられた肉をおばあさんが筋をとり、皮を外し、精肉にしていく。
なんせ今さっきまで生きていた鶏肉である。
切り分けられたもも肉は、湯気がたち、筋肉がブルブルと動いている!
「すごいね…」と妻氏と顔を見合わせた。

おじいさんもおばあさんも作業は丁寧だが恐ろしく仕事が早い。
おばあさんは肉を切りながら、刺し身以外の部分の食べ方を教えてくれる。
「ぶつ切りの方はね梅干しを入れて煮ると骨離れがいいのよ。最近の人は圧力鍋とか使うみたいだけど、私は圧力が怖くて、フフフ」

飲食店の方も買いに来るらしいが、個人で買いに来る人もやはり居るらしい。
「田舎は家族がおおいでしょ。だから一羽買って、お刺身と、煮しめをつくってね、鶏の皮とかは炊き込みご飯にして…」
おおお、まさに南九州の鶏刺し文化である。
自分の母親は都城出身なのだが、実家では時々鶏をつぶして食べていたと言っていた。
年末年始やお盆、人の集まるめでたい日にはこうやって鶏をつぶして刺し身で食べ、煮物を作り、ガラでスープを引き、炊き込みご飯を作り、というのが南九州の日常だったわけで。
今ではスーパーで単なる肉としてパック詰めされている鶏肉だが、眼の前で鶏が潰されて自分たちの食べるものになっていくのを見るのは、命をいただくみたいな感謝もありつつ、「なんかすげーもの見た」というショックのほうが上回り、お店を出てからもフワフワとした気分であった。

そんなわけで購入したお肉は
・ムネ・モモの刺し身が1.4キロ弱。
・ガラやぶつ切りが1.2キロほど
・鶏皮
・砂肝、レバーなどの内蔵
計3キロほどであった。

家に帰り、早速食べてみよう!ということに。
なにせ1時間前には生きていた鶏肉である。
過去最高の新鮮さである。

口に入れてみると、その食感にびっくり。
今まで食べたことが無い歯ごたえ。
コリコリではなく、ザクザクという感じ。
柔らかいはずの胸肉も小気味よい歯ごたえを感じる。

反面、肉の旨味的なところは薄い。
多少の水っぽさのようなものもある。
以前どこかの鶏刺しやさんが「うちは美味しくなるまで鶏を寝かせるんです」と言っていて驚いたのだけれど、やはり捌きたてのお肉は歯ごたえは唯一無二であったが、美味しい鶏刺しかどうかというと、ちょっと肩透かしではあった。

気を取り直し夜まで冷蔵庫に寝かし、軽く塩を打ってからバーナーで炙ってみた。
すると、今度は余計な水分が抜けたからか、寝かされてタンパク質が分解されたからか、歯ごたえはよく知る鶏刺しの、もっちりとした感じに。
味もぎゅっと旨味が凝縮されてとても美味しくなった。
なるほど、鶏刺しは新鮮だから旨いというわけではないんだなぁ。

おみせのおばあさんはレバーは煮しめに入れろと言っていたのだけれど、こんなに新鮮なレバーを煮て食べるのはもったいなくね?ということでフラパンでちょっと炙ってから甘辛いタレを絡めてみた。
コレがめちゃくちゃ旨く、過去最高のレバーであった。

鶏刺しはまだ800gほど残っている。
レア焼き鳥みたいにしてもいいなー。とりしゃぶもいいかもしれない。
普段は鶏刺しを買っても翌日に残ることは無いので変わった食べ方を出来ないのだけど、今回はいろいろと試せそうで楽しみだ。

鹿児島に鶏刺しやさん多しといえど、なかなか鶏をつぶしてその場で捌いてくれるという店は無い。
上荒磯地どり鶏肉店は、鶏刺しの美味しさはもちろん、鹿児島の鶏刺し文化を体感できる、貴重なお店である。一羽まるまる購入というのはなかなかハードルが高いが、全部を鶏刺しとして食べなくてもいいので、ぜひ機会があれば一度購入してみてほしい。

住所〒891-1205 鹿児島県鹿児島市犬迫町4760
TEL0992383895

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