味喜家／鹿児島市

あっ…えっ…　※とても美味しかったです

筆者はGoogleマップでレビューを書くことがあるのだが、基本的に「良かった店のみにレビューをつける」という運用方法だ。
味やお店をレビューするという行為はとても気持ちが良いので、こと意思の弱い自分はやっているうちに「偉そうな評論家様」になってしまう危険性がある。
お店の味や印象は人によって様々であり、自分の口に合わずとも他の誰かにとっては思い入れのある味や雰囲気だったりするわけで、口に合わなかった店をわざわざ低評価にする必要無くね？好きな店を紹介するだけでよくね？となった訳だ。
というわけで、このブログについても、食べて美味しかった鳥刺しのみ（基本鳥刺しはだいたい旨いんだけど）を掲載している。

ところが今回味の善し悪しとは別で掲載すべきかどうか非常に迷うケースが出てきてしまった。まあ書いちゃうんだけど。
いや味はウメェんだよ、間違いなく。
妻氏と「香ばしい系以外では肉質的はここの鳥刺しがトップクラスじゃね？」となってしまったくらい旨い。

実はこのお店、妻氏が子供の頃に「ジャンボ鶏串」なるものを買ってもらった思い出の店だそうで。
車で店の前を通った際「ここのお店で買ってもらったジャンボ鶏串がほんと大きくて、美味しかったんよねー」と言うので調べてみたところ「えっ、鳥刺しも売ってる。しかもGoogleレビューの評価良くね？鳥刺しブログにも出てる！」となり、ぜひとも買いに行こう！となった次第である。
しかも1回は購入しようと出かけて行ったら15時過ぎなのに売り切れ…。
やはり人気の店なのである。

というわけで、リベンジ。
田上の坂の途中で非常に入りにくい店なのだけど、午前中早くから車が出入りしている。
上品な感じの御婦人が物腰柔らかな感じで接客してくれるので、一瞬和間違えて菓子屋さんにでも来たのかと思ってしまった。

初めてのお店なのでおずおずと「鳥刺しを買いたいんですけど…」と申し出たところ「すみません、加熱用ということで売っているんですが…」と。
エッ、ソンナカンジデスカ…。
一瞬たじろぐ僕を見てすぐに「あっ、でも品物は以前からずっと変わらないので…」と続ける。

いやいやそうなのである。
ブログでも触れているのだけど、鹿児島県では鳥刺し文化を守るために独自の鳥刺し調理基準を設けている。
なので現状流通している鳥刺しは、大手の食肉工場で処理されているか、お店で基準を満たす処理方法が可能な設備を持っているか、ということになる。
お店での衛生基準というのは、しっかり衛生管理を行えばクリアできる感じなんだけど、2018年に改定された鹿児島県の生食用食鳥肉の衛生基準で気になるのが

生食用食鳥肉の分割及び細切（刺身用に切分ける前のいわゆる册状にする行為をいう。以下同じ。）を行う場所は，衛生的に支障のない場所であって他の設備と明確に区分されているか，又は専用の処理台（まな板等）を用いること。また，洗浄消毒に必要な専用の設備が設けられていること。

という部分。
一般的に保健所の食品衛生審査は、普段の運用よりも設備がどうなっているかをまず見られるとのことなので、いくらきちんとまな板や包丁の消毒がきちんとしていても、設備やスペースがそろって無いと審査は通らないっぽい。
小さい店だとスペース分けるの難しいし、洗浄消毒に必要な専門の設備を適切な場所に設置するのが難しかったりするのだろう。
というわけで、極小スペースの精肉店では、きちんとした衛生基準で指導された通りの調理手順を踏まえていても「生食非推奨」として販売しなくてはいけないというジレンマがありそうだ。
このあたりは今度一回きちんと調べてみたほうが良さそうではある。

さてそんなわけで、今回はそういった加熱用の鳥刺しを購入してうっかり火を入れ忘れて食べたわけだけれども、これが非常に美味しい。
生系の鳥刺しはねっとり柔らかめが多かったりすのだけれども、こちらは適度な歯ごたえがある。
またもも肉は肉自体の旨味があり、こちらも皮目の歯ごたえがコリコリしていて美味しい。
にんにく醤油も旨いし、軽く炙ってごま油で食すのもうまい。
おすすめなので（結局おすすめしてしまう）ぜひ加熱用の鳥刺しを購入して、うっかり火を入れ忘れて食べてみてほしい。